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J-REIT は分配金が安定していると聞くが、本当か

上場 57 銘柄の分配金を 5 年分そろえて、自分で数えました。

先に結論

私自身も J-REIT を持っていますが、総資産の 1% ほどです。増やしても 5% は超えないと思います。安定した分配は魅力でも、分配金を伸ばしていく商品ではないからです。その根拠も、同じ数字で書きます。

この記事は、利回りの一覧やランキングではありません。分配金がどれだけ動いたか(変動係数)と、利回りが何と連動しているか(相関係数)を計算するという測り方で、用途ごとの性格の違いを数字にしています。
数値は金融庁 EDINET の有価証券報告書をもとにした概算・参考値で、2026 年 8 月時点のものです。対象は当ツールが数値を裏取りできた 57 銘柄(上場 58 銘柄のうち、上場が新しく決算回数の足りない 1 銘柄を除く)。投資口価格は有価証券報告書に載る月別の最高値と最低値の中間値で、取引所の終値そのものではありません。

この記事の内容
  1. まず、私が J-REIT をどう位置づけているか
  2. 分配金は本当に安定しているのか
  3. 用途で分けると、ホテルだけ別物だった
  4. では利回りの差は何で決まっているのか
  5. コロナ禍に何が起きたか
  6. 増配・資産成長には向かないと考える理由
  7. それでも 1% は持っている理由
  8. このツールで J-REIT を見るときの順番

まず、私が J-REIT をどう位置づけているか

J-REIT は不動産に投資する商品です。ただ私は、これを不動産投資とは別物として扱っています。

実際の不動産投資は事業です。修繕費、管理費、固定資産税と出ていくお金が多い代わりに、それらを経費で落とせる。建物の目減りを毎年費用にできる(減価償却)。税金の扱いが、収益そのものと同じくらい効いてきます。売ろうと思ってすぐ売れるものでもありませんし、価値の判断も立地・築年数・入居状況を個別に見るしかなく、きれいな数字にはなりません。

J-REIT にはこれがありません(「投資口」は株式でいう「株」にあたる単位で、1 口いくらで売買します)。分配金は配当と同じ課税で、経費計上も減価償却もない。証券口座で即座に売れて、価格は毎日つく。やっていることは不動産でも、投資家から見た性質は株式に近いわけです。だから株式のポートフォリオの一部として扱っています。

分配金は本当に安定しているのか

「J-REIT は分配金が安定している」とよく言われます。当ツールが持っている 57 銘柄の推移から、確かめました。

使ったのは変動係数です。直近 10 期(約 5 年)の 1 口当たり分配金について、ばらつきの大きさを平均で割ったもので、小さいほど「毎回ほぼ同じ額が出ている」ことになります。

直近 10 期(約 5 年)の分配金の変動係数(54 銘柄)

対象=10 期そろっていて、無配の期がない銘柄。数字が小さいほど分配金が動いていません。

中央値7.4%
最も小さい銘柄1.6%
最も大きい銘柄74.6%

中央値 7.4% は、株式の配当と比べればかなり安定した部類です。直近 1 期に限れば、前の期からの変化は中央値で 2.6%。半分以上の銘柄が、前回とほぼ同じ額を出しています。

ここまでは一般論のとおりでした。問題は、この平均が何を隠しているかです。

用途で分けると、ホテルだけ別物だった

同じ集計を用途別にすると、様子が変わります。

用途銘柄数分配金の変動係数
(中央値)
参考利回り
(中央値)
商業31.8%4.98%
ヘルスケア13.2%5.24%
オフィス94.8%4.10%
総合237.6%4.78%
住宅78.9%4.82%
物流810.8%4.57%
ホテル365.8%6.23%

ホテル以外は 1.8% から 10.8% に収まっているのに、ホテルだけ 65.8%。一桁違います。

ヘルスケアは 1 銘柄、商業とホテルは 3 銘柄しかありません。これらの中央値は個別銘柄の事情に強く左右されるので、銘柄数の多いオフィス・総合・住宅・物流と同じ精度では読めません。

利回りのほうも、ホテルだけ 6.23% と高い。57 銘柄の中央値が 4.82% ですから、1.4 ポイントほど上です。

変動係数と利回りの相関を取ると +0.50、ホテルを除いても +0.36 でした。分配金が動く銘柄ほど利回りが高い、という関係が数字に出ています。高い利回りは、分配金が読みにくいことの対価と見るのが自然でしょう。

「利回りが高い=お得」ではありません。市場がそれだけのリスクを織り込んで値をつけている、というだけです。

用途ごとの数字は、当ツールの J-REIT タブでも同じ集計を見られます(用途ごとの傾向をくらべる →(新しいタブで開きます))。

では利回りの差は何で決まっているのか

ここが、私が J-REIT を株式寄りだと見ているいちばんの理由です。

利回りは「年間分配金 ÷ 投資口価格」。分子と分母のどちらが差を作っているのかを調べました。

分子(分配金)は、そもそも銘柄間で比べる意味がありません。1 口の大きさが銘柄ごとに違うからです。当ツールの 57 銘柄では、年間分配金は 2,361 円から 14,940 円まで開きます。稼ぐ力の差ではなく、1 口を何分割しているかの差にすぎません。

分母のほうは、利回りとはっきり連動しました。価格が純資産の何倍かを表す純資産倍率(株式の PBR にあたるもの)で並べると、こうなります。

純資産倍率(価格の高さ)銘柄数参考利回り(中央値)
低い方から 14 銘柄145.78%
高い方から 14 銘柄144.24%

相関は −0.57。人気があって高く買われている銘柄ほど利回りが低く、そうでない銘柄ほど高い。利回りの差の大きな部分は、価格の差で説明がつきます。

−0.57 は「中くらいより少し強い」関係です(相関は −1 から +1 の値をとり、絶対値が 1 に近いほど関係が強い)。この数字だけで「利回りの差はすべて価格で決まる」とまでは言えません。ただし分配金の水準は 1 口の大きさが銘柄ごとに違うため銘柄間で比較できず、差を作れるのは実質的に価格しかない、という事情も併せて見ています。

期間を短く取ると、偏りはもっとはっきりします。

およそ半年で、どれだけ動いたか(変化率の絶対値)中央値
投資口価格7.5%
1 口当たり分配金2.6%

価格は分配金の 3 倍ほど動いています。「分配金は変わらないのに利回りが変わった」という場面のほとんどは、価格が動いただけです。

どちらも「始まりと終わりの 2 時点でどれだけ変わったか」で揃えて比べています。価格を「その間の高値と安値の開き」で測ると 9.9%(最も広く取ると 16.3%)になりますが、それは分配金の測り方と対等ではないので採っていません。

これは当ツールの使い方にも直結します。当ツールの投資口価格は有価証券報告書に載る値なので、中央値で 6 か月前のものです。その間に価格は中央値で 7.5% 動きます(高値と安値の開きで見れば 16.3%)。参考利回りは銘柄を絞り込むためのものと考えてください。実際に買う前には証券会社のアプリで現在値をご確認ください。

コロナ禍に何が起きたか

用途による性格の違いがいちばんはっきり出たのが 2020 年から 2021 年です。前年の同じ決算期と比べて、その用途で最も下がった倍率を集計しました。

用途前年同期比で最も下がった倍率意味
ホテル0.04 倍前年の 4% まで減った期がある
総合0.65 倍3 割超の減少
住宅0.76 倍2 割超の減少
物流0.84 倍2 割弱の減少
ヘルスケア0.89 倍1 割強の減少
オフィス0.94 倍1 割未満
商業0.97 倍ほぼ影響なし

物件の売却益などで一時的に分配金が跳ねた期の反動減は、この集計から外しています。跳ねた翌年に元へ戻っただけのものを「下落」と数えると、実態を誤って伝えるためです。

ホテルの 0.04 倍は、1 口 1,656 円だった分配金が翌年の同じ期に 69 円になった、ということです。事実上の停止でした。「REIT は分配金が安定している」という一般論は、ホテルには当てはまりません。

裏を返せば、ホテルを外していれば、最も下がった期でも 0.65 倍(3 割超の減少)で収まっていました。用途を選ぶことが、J-REIT ではいちばん効く判断です。

増配・資産成長には向かないと考える理由

J-REIT は、利益の 90% 超を分配すると法人税がかからない仕組みです。だから利益をほぼ全額配ります。株式の配当性向でいえば 90〜100% が正常な状態、ということになります。

ここに構造的な限界があります。手元に利益が残らないので、内部留保で物件を買い増せない。資産を増やすには、借入を増やすか、投資口を新しく発行して資金を集めるかです。前者は金利上昇に弱くなり、後者は 1 口当たりの取り分を薄めます。

実績も同じでした。当ツールの 57 銘柄の分配金の 5 年前比は、中央値で +13%。5 年で 13%、年率にすれば 2.4% です。株式の増配銘柄のような伸びではありません。

上位はホテルが占めますが、これはコロナ禍で潰れたところからの戻りであって成長ではありません。最も伸びた銘柄は 5 年前比 +2,155%。この銘柄はコロナ期に分配金が前年の 0.04 倍まで落ちています。

ここで見ているのは分配金の伸びだけで、値上がり益(キャピタルゲイン)は含めていません。ただし J-REIT の価格は分配金の水準に強く連動するため、分配が伸びなければ価格も伸びにくい関係にあります。値上がり益まで含めた長期のトータルリターンは、本記事では検証していません。

今の分配を受け取り続けるための商品であって、分配金を伸ばしていく商品ではない。上限を 5% と決めているのは、この一点です。資産形成の主役は別に置いて、J-REIT はその外側に置いています。

それでも 1% は持っている理由

向いていないと書きましたが、保有をゼロにはしていません。理由は 3 つあります。

まず、賃料という土台があること。株式の配当は業績に直結しますが、J-REIT の分配の原資は賃貸借契約に基づく賃料です。景気の波が伝わるまでに、契約という緩衝材が挟まる。実際、57 銘柄のうち 35 銘柄が直近 10 期に一度も減配していません(当ツールの「分配の安定度」で A 評価)。

次に、株式と値動きの理由が違うこと。J-REIT の価格は金利の影響を強く受けます。株式とは別の要因で動く資産を少し混ぜておくこと自体に、意味があると思っています。

3 つめは、数字が読みやすいことです。借入の重さ(LTV)は 57 銘柄すべてで貸借対照表から計算でき、中央値は 46.8% でした。実際の不動産投資では、自分の物件の価値すら簡単には確定できません。J-REIT なら判断材料が数字で揃います。

ただし、どれも「少し持つ理由」であって「多く持つ理由」ではありません。だから 1%、増やしても 5% までです。

このツールで J-REIT を見るときの順番

ここまでの数字から、当ツールでは次の順で絞り込むことをおすすめしています。J-REIT タブの「おすすめの順番でしぼる」を押すと、この順で条件が重なり、各段で何銘柄が外れたかが出ます。

順番条件理由
1用途を決めるコロナ禍の下落が 0.04 倍から 0.97 倍まで開いた。ここが一番効きます
2分配の安定度 A直近 10 期に減配がない銘柄。57 銘柄中 35 銘柄
3LTV が中央値以下借入の重さ。低ければ良いという話ではなく、金利上昇への耐性の目安
4分配金の 5 年前比が +20% 以上安定度 A の中を分ける軸。並べ替えではなく足切りなので銘柄がかなり減ります。ホテルの大きな数字は戻りなので割り引く
5参考利回りの高い順最後の物差し。価格は動くので、実際の利回りは証券会社で確認

純資産倍率と稼働率は、この絞り込みに入れていません。有価証券報告書から読み取れたのが純資産倍率で 57 銘柄中 56 銘柄、稼働率は 30 銘柄にとどまるためです。条件にすると、数値が取れていないだけの銘柄まで消えてしまいます。絞り込んだあとの確認にお使いください。

J-REIT タブを開く 57 銘柄の分配金の推移・安定度・LTV・参考利回りを一覧で比べられます(新しいタブで開きます)

本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄の売買や記事中の保有割合を推奨するものではありません(保有割合は筆者個人の考え方です)。当サイトは金融商品取引業の登録を受けておらず、投資助言を行うものではありません。数値は執筆時点で取得したデータに基づく概算・参考値です。J-REIT は元本割れの可能性があり、分配金は不動産市況・金利・稼働状況等により減少または無配となることがあります。投資の判断はご自身の責任でお願いします。

公開 2026-08-14/書いた人:ねんりん